Stock Journal

ストックオプションをもらってIPOして、次は自分でスタートアップをはじめた話

  • 株式会社COUNTERWORKS
  • 代表取締役CEO
  • 三瓶直樹さん

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ストックオプションをもらってIPOして、次は自分でスタートアップをはじめた話

ストックオプション(SO)といえば「会社が上場して大金持ちに」「夢がある報酬」というポジティブなイメージを持つ方だけでなく、「上場しないと紙くず」「宝くじのようなもの」というその存在事体を幻のように感じている方や「なんとなく怖いもの」というネガティブなイメージを持つ方も少なくないようです。その実態は実際に権利を行使した人でないとわからないこともあるはず。

株式会社フリークアウトに第1号社員として入社して、株式上場後にストックオプションを実際に行使・売却した経験を持ち、後に起業した会社でもストックオプションを社員向けに発行している株式会社カウンターワークス 代表取締役CEOの三瓶直樹さんにストックオプションのリアルな話を聞きました。聞き手はNstock社 CEOの宮田です。

プロフィール

三瓶 直樹
株式会社COUNTERWORKS(カウンターワークス) 代表取締役CEO
学生起業を経てサイバーエージェントグループにて広告代理業に従事、その後株式会社フリークアウトの創業に参加。第1号社員として入社し、セールスマネージャー、ビジネス開発マネージャー、社長室長、子会社社長を経て上場後に退社。2014年にCOUNTERWORKSを創業。


宮田 昇始
Nstock株式会社 代表取締役CEO
2013年に株式会社KUFU(現SmartHR)を創業。2015年に人事労務クラウド「SmartHR」を公開。2021年にはシリーズDラウンドで海外投資家などから156億円を調達、ユニコーン企業の仲間入りを果たす。2022年1月にSmartHRの代表取締役CEOを退任し、取締役ファウンダーに就任。同月、Nstock株式会社(SmartHR 100%子会社)を設立。

フリークアウト社の立ち上げ黎明期とは

宮田:以前、SmartHR社とカウンターワークス社のオフィスは渋谷の桜丘で近所でしたから、あの頃は三瓶さんとはたまに飲んでましたよね(笑)。そもそも、三瓶さんはどんな経緯で前職の株式会社フリークアウトに入社されたのでしょうか。

三瓶:ちょうど2011年初で東日本大震災の少し前に、知人経由でフリークアウト社の代表 本田謙さんと出会い、声をかけていただきました。

宮田:当時、経営陣からストックオプションに関する話はあったのでしょうか?

三瓶:大分昔のことなので、はっきりとは覚えていないのですが……。「ゆくゆく株式上場も考えているから。こんな制度もあるよ」と説明いただきました。

ストックオプションが起業の一助に

宮田:ストックオプションを行使したときを思い返して「当時、会社にもっとこうして欲しかった……」という要望はありますか?

三瓶:株式を取引したのもフリークアウト社が初めてでしたし、そもそも株式投資に詳しくなかったのが実情だったので、当時はそれほど気にしてませんでした。ぜんぶ行使できるまでに時間がかかるとか、行使のタイミングによって金額は変わるとか、ずっと持っていたら株価と連動して……などは、すぐに理解しきれなかったかもしれません。

宮田:差し支えなければで大丈夫なのですが、その行使したお金は何に使われたんですか……?

三瓶:その時点でこのカウンターワークス社という新しいスタートアップを始めると決めていました。会社を立ち上げて、しばらくは外部資本を大きくは入れないという選択をしていました。2014年の立ち上げからジャフコさんから資金調達する2016年まで2年間、僕のストックオプションのキャピタルゲインを運転資金の一部として会社経営をしていました。

宮田:ちなみに、初期段階で資金調達を積極的にされなかった理由はなにかあったのでしょうか?

三瓶:当時は事業に対しての解像度が低いままで手数を振って進めていました。立てていた仮説は長い視点で見れば自信があったのですが、短期的にはピボットしたり、少し違う施策へ舵取りする可能性もあります。そのタイミングから外部資本を入れすぎると、その舵取りがやりづらくなるかもしれない。ある程度、方向性が見えるまでは様々な可能性を残しておきたかったのです。もちろん、その状態でも伴走してくれる出資者の方の存在は知っていましたが、「その事業的なリスクをわざわざ取らなくても、僕が金銭的にリスクを取ればいい」という考え方です。

宮田:カウンターワークス社の創業にあたりストックオプションの存在は大きかったですか?

三瓶:会社を立ち上げる際に、それがなければできなかった訳ではありませんが、あったからこそ助かったのも事実です。資金調達活動はコストが高く、時間もかかります。当時は事業推進のスピードを高めたかったため、私の場合は手元資金があったことが有利に働いたのは間違いありません。

リスクを取ってくれた人、事業貢献してくれた人に報いたい

宮田:その後、三瓶さんはストックオプションを発行して社員に渡す立場になります。これまでにカウンターワークス社では何回ストックオプションを発行しているんですか?

三瓶:合計4回、いずれも税制適格SOを資金調達の前に発行しています。

宮田:その4回は、それぞれどんな位置づけで渡されているんですか?

三瓶:2016年の初回と翌年の2回目は「創業リスク」を取ってくれたことへの報償です。2019年の3回目と2022年の今回は、創業リスクは減っているなかでこれからもっと会社を大きく成長させたいというインセンティブのニュアンスです。前職から報酬を下げてご入社いただいている方や、前職に残ればもっと上を目指せたはずだけど前職と同じくらいの給与水準で入社してくださった方に向けて渡しています。

宮田:それぞれの回で「期待値」について、どう三瓶さんはご説明されたのでしょうか?

三瓶:1〜2回目は僕とCFOの薮本とで説明をしました。詳細はCFOからで、「ストックオプションとはなんぞや?」とか「今回発行する意味」の大枠は僕からお話しましたね。

宮田:ストックオプションの配り方に関して、入社時期や役割など基準になる考え方はどうされているのでしょうか。

三瓶:「取ったリスクのサイズ」「企業価値への貢献」「業績への貢献」の順番で考えています。

創業したての頃、事業が事業とも呼べない何もない状況で加入してくれるのと、ある程度キャッシュフローが回っている状況で入社されるのは訳が違うと思っています。創業初期でリスクを取って会社に貢献してくれる方が居たからこそ、その後の価値もついてくる。その前提がなければ現在の価値もないので大きめに評価しています。

続いて、「企業価値への貢献」ですが、長期的な仕組みを大事にするからですね。影響範囲が大きいレイヤーのポジションで責務を担っている方、現場で特定のミッションを果たしてもらっている方、いずれも会社にとっては重要なのは変わりませんが、短期的な業績に比べて長期的に成長できる仕組みを作ることで本質的な企業価値が向上する。ゆえに短期的な「業績への貢献」よりも先にくるのです。

宮田:確かに。僕も近い考え方です。ちなみに、三瓶さんは信託型のストックオプションは検討されなかったのですか?

三瓶:存在は知っていますし検討もしましたが……。運用が大変そうで、明確にイメージができていないのが現状です。数年後にイメージが付いたら導入する選択肢はもちろんあります。

宮田:ほかにストックオプション以外にインセンティブとなる制度はあるのでしょうか?

三瓶:福利厚生に近いのですが、僕らのサービスを通じてポップアップストアを出店いただいたお客さんのお店で買い物をするときは補助を出す制度があります。買い物をするにあたって毎月上限1,500円を会社が補助をしています。

加えて、四半期単位でMVPの個人と、最も成果を挙げたチームを表彰しています。バリューに「One Teams」と掲げているので、協力して出した成果については報いたい。トロフィーも毎回新しいものを作っています。

宮田:今後も三瓶さんはストックオプションを配る側の立場だと思いますが、貰う側の方がこの点を理解しているとスムーズというポイントはありますか?

三瓶:そもそもですが……。ストックオプションというより、「株式の仕組み」を知っておくと良いですね。テクニカルなことは知らなくてもいいですが、資本主義の原理原則で「株式会社はどのように成り立っているのか」は知っていると良いですね。資産を形成するためにも、詳しくて悪いことは何もありませんから。

宮田:おっしゃるとおりですよね。2022年春から高校の家庭科の授業で『金融教育』が始まったそうですし、これからは株式の仕組みを理解した若い世代が増えるといいですね。本日はありがとうございました!

カウンターワークス社の採用情報はこちら

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COUNTERWORKS 会社紹介資料



(企画:宮田 昇始 / 取材・文:上野 智 / 撮影:岡戸 雅樹)

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