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プレシリーズAで5.2億調達。注目の若手起業家・ゆずしおが選んだ“しっかり報いる”ストックオプション設計

  • 株式会社Stack
  • 代表取締役
  • 福田 涼介

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プレシリーズAで5.2億調達。注目の若手起業家・ゆずしおが選んだ“しっかり報いる”ストックオプション設計

「だって、お金ってあるほうがよくないですか?」

なぜ起業したのかという問いにまっすぐそう答えたのは、「ゆずしお」こと福田 涼介さん。21歳で創業し、ECプラットフォーム・Shopifyの拡張機能を提供する株式会社Stackを率いる若手起業家です。Stack社(旧社名: Appify Technologies)はARC'TERYXやMAISON SPECIALなどのアパレルブランドから、日清食品やグリコなどの食品ブランドまで約150ブランドにサービスを提供しており、2022年10月にはプレシリーズAで5.2億円を調達。「フェアなストックオプション(以下、SO)設計を実現し、すぐれた人材にしっかりと報いる体制を整えたかった」と語る福田さんに、その経緯や起業のきっかけ、事業への想いを伺いました。

福田 涼介(ふくだ・りょうすけ/ゆずしお) 株式会社Stack 代表取締役
1996年11月生まれ。メルカリ・DMMでの新規事業立ち上げを経て、2018年6月に株式会社Appify Technologiesを創業。ノーコードでモバイルアプリが作成できる「Appify(アッピファイ)」をはじめ、Shopifyの拡張機能を提供する。2022年10月、プレシリーズAで5.2億円を調達。2023年には社名を「株式会社Stack」に変更し、既存サービスのさらなる充実と新規サービスの展開を加速させている。

宮田 昇始(みやた・しょうじ)Nstock 代表取締役CEO
2013年に株式会社KUFU(現SmartHR)を創業。2015年に人事労務クラウド「SmartHR」を公開。2021年にはシリーズDラウンドで海外投資家などから156億円を調達、ユニコーン企業の仲間入りを果たした。2022年1月にSmartHRの代表取締役CEOを退任、以降は取締役ファウンダーとして新規事業を担当する。2022年1月にNstock株式会社(SmartHR 100%子会社)を設立。株式報酬のポテンシャルを引き出すメディア「Stock Journal」を運営している。

VCに「めっちゃいいね」と言われる好業績の秘訣

宮田 昇始(以下、宮田):Stack社は宮田の個人投資先でもあるので、ゆずしおさんにインタビューって少し照れくさい感じもしますね(笑)まずは読者の皆さんに向けてStack社の事業内容について教えてください。

福田 涼介(以下、福田):そうですね、今日はよろしくお願いします。

Stackはひと言でいえば、Shopifyの拡張機能をアプリとして提供する会社です。拡張機能とは、標準機能では実現できないさまざまな機能をShopifyに追加できるもの。Stackではノーコードでモバイルアプリを構築・運用できる「Appify 」と、会員特典やポイントなど会員顧客向けのロイヤリティープログラムを展開できる「VIP」という2サービスを提供しています。現在は、約150ブランドでご利用いただけるまでになりました。

GMV(流通取引総額)でいうと年間300億円ほどで、そのうち0.5~1.0%ほどが売上になります。今期からは会社が黒字の状態で事業を成長させることができています。

宮田:黒字化! すごいですね。

福田: 近年、ベンチャーキャピタル(以下、VC)も黒字志向になっているので、この辺の話については「めっちゃいいね」と反応をもらったりもします(笑)

宮田:「Appify」や「VIP」は積極的な宣伝はしていないと思うのですが、どうしてそんなに伸びているんですか?

福田:そうですね、僕たちは広告宣伝費は1円もかけていませんが、それでも毎月安定して8~15社の契約を獲得できています。

仮にA社がECをShopifyで構築する際には、自社で作るのではなく、外部の構築会社に依頼するケースがほとんどです。コンペ形式で発注先を決定しようとした際に、Shopifyの構築に精通している会社の多くが、提案内容にStackのサービスを組み込んでもらえているんですね。つまり、どの構築会社が選ばれても、A社を一緒に支援できるという状況。その状況をつくれていることが大きいと思います。このパートナーセールスの強みを活かして、新規プロダクトを次々に開発していこうと思っています。

直近では、大手小売企業向けの基幹システムを開発しています。たとえばアパレル企業って、ブランドごとに複数のストアを持っているケースが多いのですが、ブランドをまたいだ情報収集や会計処理ってとても大変なんですよね。そういった課題を解決していきたいなと考えています。

宮田:すごくいい状態みたいですね。現在は何名のチームで開発していますか?

福田:現在、組織としては正社員で11名、その他にも業務委託で関わっている人が複数人いるのですが、引き続き少数精鋭のまま強いチームづくりをしていくつもりです。

お金は絶対、あるほうがいい。だから僕は起業した

宮田:そもそもゆずしおさんが起業を決意されたのは、どんなきっかけでしたか?

福田:起業の最初のきっかけは、東大の起業サークルの新入生歓迎会に参加したことでした。当時、早稲田大学の寮に入っていたのですが、そのときのルームメイトの先輩に連れられて、この歓迎会に参加したんですすると、その開催場所がたまたまコロプラのオフィスで。コロプラ創業者の千葉 功太郎さんから「これから起業をするなら、プログラミングできたほうがいいんじゃない?」と言われて、「たしかに」と思って勉強しはじめました。今思い返すとそれがきっかけですね。性に合っていたのか、どんどんハマっていきました。

それからは在学中にメルカリで2年、大学を中退してからDMMで1年働き、新規事業の立ち上げを経験しました。2018年にDMMで所属していた事業部がなくなったとき、「これはいいタイミングかもしれない」と起業しました。21歳の頃ですね。

宮田:千葉さんのアドバイスが大きな転機だったんですね。起業したいという思いは、いつ頃からあったんですか?

福田:漠然とですが、稼ぎたいとはずっと思っていたんです。だって、お金ってないよりあるほうが絶対よくないですか? 僕は母子家庭で育ったのですが、母親の貯金でギリギリどうにか生きてこられたんですよ。お金がないと、どうにもならないことがある。それを身をもって経験したことは、起業に興味をもった背景かもしれません。

宮田:なるほど、そうだったのですね。ちなみに、ゆずしおさんの中で、どんな起業家になりたい、という理想像はありますか?

福田:いや、実は僕はあんまり「どうなりたい」っていうのはないんですよね。よく聞かれるんですけど。一方で、常に限界を超えていきたいなとは思っています。

漫画のHUNTER×HUNTER(※1)って分かりますか? そこに出てくるキルアは、確固としたゴールがあり、そこにたどり着くためにやるべきことを導き出していく「逆算型」じゃないですか。一方で主人公のゴンは、その時々を全力で頑張った結果として山を登りきっている「積み上げ型」ですよね。それでいうと、僕はゴン派で「積み上げ型」なんだと思います。

宮田:意外です。完全にキルアタイプだと思っていました。

福田:そうなんですよね。実は最近、会社名を「Stack」に変更したんですけど、その意味も「積み上げていこう」という意味合いが由来なんです。なのでこれからも変わらず、いろんなプロダクトと価値、信頼をコツコツと積み重ねていきたいと思っています。

※1 「週刊少年ジャンプ」にて1998年より連載されている少年漫画。著者は冨樫義博氏。

上場前に辞める社員も報われるようにしたい。5年目にして実現したSO付与

宮田:ここからはStack社のSOの内容について教えてください。

福田:StackのSOは、現在は信託型SOと税制適格SOの2種類を発行していて、今後トータルで20%を発行します。信託型SOは社員にまだ付与していません。先日のニュースで色々と前提は変わりましたが、使い道はありそうなので一旦そのままにしています。

税制適格SOは、退職後の持ち出しもOKにしました。ベスティングは入社日起算で、付与時から4年で25%ずつ。あとはM&A時にも社員が有利になる方(SOを没収せずに行使できる設計)を選びましたね。ちょうど最近、新しく発行したところです。

宮田:ありがとうございます。このタイミングでSOを発行した狙いを教えてもらえますか?

福田:直近、信託SOを発行したのですが、そのときの株価算定の結果を参照できるということで同タイミングで発行しました。Stackでは、入社時に「発行株式に対するN%を付与します」と将来的なSO付与を約束していることもあり、この約束をちゃんと守れてよかったです。社員にも「ちゃんと約束どおり渡したからね!」と話しました(笑)

宮田:今回、契約書ひな型キット「KIQS」を利用してくださったと聞いています。KIQSを利用するきっかけを教えていただけますか?

福田:そうですね。おそらくほとんどの起業家がそうだと思うのですが、僕も最初はSOについての知識が全くありませんでした。べスティングが上場起算であるとか、退職時に失効するとか、そのあたりも何が一般的なのか全然知らなくて。そんな時に、宮田さんの発信を見かけたのがきっかけでしたね。

Stackは11人という少数精鋭の会社なので、1人ひとりの成果に対してSOでしっかり報いたいという思いはずっとありました。たとえ会社のフェーズが変わってしまって辞めていく創業初期のメンバーが居たとしても、しっかりと報われるようにしたい。そう考えると、SOプールが20%、退職後の持ち出しOK、などという設計は真っ当に感じ、KIQSを使用することにしました。

宮田:そう言ってもらえて嬉しいです。KIQSを使ってみての感想はいかがでしたか?

福田:税制適格SOの発行にあたり、はじめて社員向けにSO説明会を行ったのですが、説明がとても楽でしたね。「上場してからべスティングがはじまる会社が多いけど、ウチは付与時からはじまるよ〜」とか、「権利確定した分のSOは持ったまま退職できますよ〜」などとクリアに説明できました。これはトレンドにあったひな型を活用するメリットだと思います。こうした要点に加えて、有償/無償や税制適格といったSOの基本的な仕組みについても、しっかり解説できました。

あとは大幅な工数削減にもなりましたね。弁護士さんに「この契約書を使いたいです」とKIQSのレビューを依頼したら、あとはもういくつかの項目を選択するだけですぐに完了、という感覚でした。この点は非常にありがたかったですね。

社員は「そんなもんでしょ」でも僕はそれでOK

宮田:ちなみに、社員の皆さんの反応っていかがでしたか?

福田:肝心の社員はあんまり興味なさそうな反応でした(笑)Stackって10人目までの社員全員が0.25%以上のSOを持ってるんですけど、これって一般的なスタートアップと比べて結構多いと思っています。でも社員のみんなはあまりピンと来ていないみたいで「そんなもんでしょ」って感じでした。さすがに「0.25%って多くないですか?」って言ってくる社員もいましたけど。

宮田:(笑)こだわってSOを設計した側からすると「もっと喜んでほしい」とか、残念に思ったりはしませんでしたか?

福田:普通そう思いますよね。でも、僕はそれでいいかなって。他社に転職しようとしたとき、そこで標準的なパーセンテージのSOを出されたら「え? Stackってすごかったんだ」って気づくと思うんです。そしたら、転職を考え直してくれるかもしれませんよね(笑)それは半分冗談ですが、やっぱりなかなか価値が伝わらないのはどうにかしたいですよね。SOの価値がもっと可視化されてそのメリットを従業員に実感してもらえるようになったらいいなと思います。

宮田:その辺はNstockでも頑張りたいところですね。さいごに、KIQSやNstockへの今後の期待を教えてください!

福田:契約書の良し悪しがわからないままSOを付与しちゃってる起業家って、まだまだ多いと思います。SOの契約書ひな形って、きっと世の中にたくさんありますよね。なかにはSOの制度や法律には即しているけど現役のスタートアップの実情にはそぐわないものや、時価総額1,000億円規模のスタートアップを想定して作られていないものもあるかもしれない。そんな中から「なんとなくでひな形を選ぶこと」って、結構なギャンブルだと思うんです。契約って巻き戻すことのできない重いものなのに、そういう選び方をするのはめちゃくちゃ怖いですよね。だから、Nstockにもそうですし、VCの皆さんにもこの辺をリードしてもらえると、とても嬉しいなと思いますね。

宮田:ゆずしおさんの起業家としての純粋な想いが伝わり、とても楽しいインタビューでした。本日はありがとうございました!

(制作協力:株式会社Tokyo Edit/撮影:高木 成和)

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